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​Z世代コラムニストによる映画コラムサイト

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2025.08.06

夏の砂の上

都会のビルに囲まれた中で生きてきて
あれほど雨を望んだことなど

私にあっただろうか。


7月某日、うだるような暑さの晴れの日。
日差しに肌を焼かれながらたどり着いた

小さな劇場でこの映画を見た。


はじめの雨の映像と

エアコンの風の涼しさに、

自分も打たれているような、
かわいた肌が潤っていくような感覚に陥った。
が、そこからはひたすらにスクリーンからの

日差しに照りつけられる。


何か心臓が縮むようなことが

起きるわけではない。
なのになぜだかのどが渇く。
水筒は持ってきている。
だというのに手が動かない。
息をつく暇もないというわけでもないのに、
水筒に手をのばせなかった。


のどが渇いたままでいたい、
そんな不思議な欲求が生まれてくる。


この渇きを癒せるのは

雨だけなのだろうと思った。
スクリーンの中にようやく降った雨に、

はっと息をついたのは
主人公と同じタイミングだった。


結局、映画が終わるまで

一口も水を口にすることはなかった。


雨によって潤った彼らの心は

そのままだろうか。
それともまた渇くのだろうか。
そんなことを考えながら劇場を出て思う。


ああ、のどがかわいた、と


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