人生は最高のドラマだと誰かが言った。

だがその「人生」が

長い年月によって薄めて出されたものだと、

誰が思っただろう。
その原液は劇薬であると、誰が思っただろう。
何かで中和しなければ、

飲み込む前に口から出さなければ、

吐き出してしまうほどの劇薬であると。

『国宝』という映画は、その原液を

まるごと飲まされたような映画だった。
ここのところ忙しく、

公開から1ヶ月近くたってやっと見に行った。
寝不足がたたって気持ち悪くなり、

目を閉じてしまうこともあった。
だが見終わった今、それはある意味で

正解だったと思う。

一度でこれをすべて飲み込もうとすると、

若輩者の今の私では吐き出してしまう。
いや、中毒になる。
現に今、

これを書くために家に帰ってくるまでの間、

頭が回っているのに回っていないような、

足元がふらつくような、そんな状態であった。
とにかく足を動かさなければ飲み込まれる、

そんな恐怖すら浮かんだ。

——「急性人生中毒」

そんな名前を付けたくなるような状態である。

とにかく見ていない部分を見るために、

今度は体調を整えて見に行こうと思う。
すべてを食らった時に、

自分がどうなるのかの想像はつかない。